選択は自由なのか

みなさんはシーナ・アイエンガー教授をご存知でしょうか?
2011年NHKの白熱教室でも放送されたコロンビア大学の教授です。この講義の中には非常に興味深いことが題材として使われています。今日は彼女の講義をみなさんと一緒に見て行きましょう。

6種類のジャムと24種類のジャム

小売業では「品揃え」ということを耳にしますね。「品揃え」ってどういう意味でしょうか?

お客が望んでいる商品、あるいは求めている商品を適切に把握し、それらの商品を取り揃えること。単に商品の種類ではなく、ブランド、サイズ、色、柄、価格など消費者ニーズを捉えたキメ細かな品揃えが重要となる。今日のように競争が厳しいマーケットでは自店の特徴を出さなくてはならない。By 流通用語辞典

同じ商品でもいろいろ揃えることでニーズを掴みなさい。そうしないと厳しいマーケットでは勝ち残れないよ!って感じでしょうか?

彼女はこの「品揃え」に一石投じています。
アメリカのスーパーマーケットで実験したところ、試食に立ち寄っったお客様の数は24種類のジャムを用意した時のほうが6種類のジャムよりも多かったそうですが、実際に購入した人は僅か3%だったそうです。対して6種類のジャムで試食した人は30%の方が購入したそうです。10倍ですね。

多すぎる選択は悪?

この実験はスーパーマーケットだけではなく、401Kでの株式ファンドでも同様の結果になったそうです。401Kの株式ファンドの数は600種類ほどあるそうですが、その数を60種類まで絞った結果加入率が20%増えたそうです。
人は与えられたものだけでは満足出来ないにも関わらず選択肢が多すると選択すること自体を諦めてしまうのです。これは小売業にとっては機会損失ですよね。
一般的な小売業では約45,000アイテムが販売されており、世界最大の小売業であるフォールマートの品揃えは常時100,000アイテムが販売されています。凄いですね。ただし世界第9位のALDI(ドイツ)では1,400アイテムだそうです。トマトソースは1種類しか置いていないとか。この違いはどう捉えるかはみなさんの判断としたいと思います。

選択しやすくする方法

講義の中では課題を投げかけるだけではなく解決方法も提示されています。

  1. カットすること
  2. 具体化すること
  3. 分類を分けること
  4. 選択に慣れさせること
カットすること

無意味に重複した選択を無くすことで売上高は向上しコストを抑えることが出来ます。

具体化すること

その商品を選択することで他とどういった違いがあるのかを具体的に示すことです。具体化することを逆手に取っているものがあります。それは「クレジットカード」です。「クレジットカード」で買い物をした時、お金を消費したという実感がわかないために15%~20%ほど現金よりも多く買い物をするそうです。

分類を分けること

もし商品数が多いのであれば商品の分類を分けることで顧客の選択を助けることが出来ます。分類を分けるときは提供する側の意図ではなく、選択する顧客にとって意味のある分類分けをしてください。「日配」「生鮮」なんてもってのほか。顧客には何も意味のないものです。

選択に慣れさせること

最初に多くのことを選択させると選択することを諦めてしまいます。少ない選択から徐々に選択肢を広げることで人は「選択すること」に慣れ選択することを学ぶのだそうです。
なぜスーパーの店内では野菜から買い物をさせるのでしょうか?定説に囚われず売場を革新することで顧客の選択の方法も変わるのではないでしょうか?

商品を選んでくれることを待つのではなく顧客に積極的に選択してもらうためになにをすべきか。「品揃え」を良くするだけではなく顧客にとってよい「選択」のできる「品揃え」を考えることが必要なのではないでしょうか。